蛇蒸しパン

1/19
205人が本棚に入れています
本棚に追加
/116ページ

蛇蒸しパン

「大体の事は聞いてますが、堅苦しいのは苦手なんで、敬語はここまでにします」 逆に余計なコミュニケーションというか、様子見しなくていいので楽な気持ちになる。 「現場の人数が増えたのは嬉しいが、俺らはまだ敵のレベルが低い仕事……と言っても大変だが何とかこなしてる。女と組むのは初めてだが、分からない事は何でも聞いてくれ」 この人も女性慣れはしてなさそうだが、隣のポッチャリはもっと苦手そうだった。 一定の距離を保ったまま近づいて来ないし視線も逸らし気味だし、こんなんで上手く行くのかと不安に思ってしまう。 「俺も啄も少しづつ慣れるようにしていく。田村さんにも頼まれてるし、社長が目をかけてるみたいだからな。次の現場の説明をしてもいいか?」 返事をして床に円になって座り、前回はなかったがプリントを配られた。 「次は少し厄介だ。簡単に言うと蛇の世界だが人に近い者も半分住んでる」 今日は打ち合わせはないと思っていたのに、意外と真面目みたいだ。 「ボスは一体だが周りを小さな蛇が無数に囲っていてるのと、雑魚のクセに猛毒を持っているのも難点だ。啄も同行するが、事前に解毒剤も準備しておいてもらう」 蛇はウチのドラム缶だったら悲鳴をあげているが、蛙以外で少し安心でも毒にヤラれる前提で話が進んでいるのが気に入らない。 噛まれない方法とかないのかと聞きたいし、むしろそれを教えて欲しい。 「俺は一度に十体ぐらいしか倒せないと思うが、敵が小さくてマムシのように跳ねるし、全部はかばいきれない」 痛みを伴う仕事は嫌だし、初なんだからもう少しハードルを下げて欲しいと思ってしまう。 「数も多いしどういう作戦で行くか正直迷ってて、アンタらはまだ蛙数匹しか倒してないから、いきなりハードルが上がって大変だと思うが……」 「あの、蛇に噛まれずに進むのは無理なんでしょうか」 「恐らく無理だ。いつもは俺の相棒がいるんだが、今回は事情があって来れない」 僅かな期待を持って質問したが即答されたので、それなら誰かヘルプしてくれてもいいし初心者を頭数に入れるのも間違ってる気がする。 お試し体験しかしてない新人との任務なのに、この人は一人で何とかしようとしている。
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!