蜜鹿の子

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蜜鹿の子

シルエットだけでも気持ち悪く蜂ではなく、(あぶ)を大きくした化け物に見える。 飛び上がったので双棒を伸ばして追跡しても、付き刺そうとするとすぐ交わされてしまう。 困惑のままでいると、危ないとリーダーの声が聞こえ、蜂から針が飛びつなぎにピンクの液体がついていた。 「はい、アウト!」 スピーカーから社長の声がして動きは止まったが、針が飛んでくるなんて聞いてないし、攻撃も交わされている。 双棒に集中しすぎて防御が疎かになっていたのもあるが、こんな調子ではすぐに殺られてしまう。 実際は針も刺さるし毒も回ってる状態なので、気を許してはいけませんとアドバイスを受け、次はリーダーの番みたいだ。 「期待の新人は一回休みで、解答権はナシです」 解答権ってクイズじゃないんだからと思いつつ、隅に座って動きを見る事にしたが、刀の刃先がいつもより長い気がする。 走って間合いを取っているが、相手は宙に浮きながら針を飛ばして来るので、それを交わすのが精一杯みたいだ。 「リーダー、ブーツ履いて下さい!」 「履く暇ね―んだよっ!」 こちらは休みで身動きが取れないし、大きなハエ叩きでもあれば潰してやるのにと歯がゆい気持ちになる。 リーダーは攻撃を交わしながら、壁を伝ってジャンプしようと必死に藻掻いていた。 「そんな無謀なチャレンジするなら、片方ずつでもブーツ履いた方がいいですよ!」 声を聞いてブーツを目がけて走り出すリーダーだが、真上には蜂の影がプカプカと浮かんでいて、ここまでおいでと言わんばかりだ。 覚悟を決めたのか走るスピード全くを止めず、蜂が攻撃態勢に入ろうとした瞬間フェイントだよと助走をつけ、そのまま大きくジャンプした。 リーダーの刀は蜂の影を真っ二つに切り裂き、あっと言う間の速さでポカンと見つめていた。 「よく頑張りましたね!でも数匹いると大変そうです、ブーツを履いて再挑戦しますか?それとも百合さんにバトンタッチしますか」 「交代します……」 もう少し根性を見せてくれると思ったのに、アッサリと譲るので慌てて立ち上がったが、さっき瞬時に倒された分は仕返しはしてやりたい。 十倍にして返してやると気合を入れ移動すると、蜂の影が次々に姿を現し、先程の倍以上の不気味なシルエットが頭上に蠢いていた。
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