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東京を離れて、二ヶ月が過ぎた。 この松本に来た頃、山は色づいていたが、街はまだ秋のほんの入り口。 ところが、足早にやって来た秋に綺麗に街も色づいたと思っていたら、 あっという間に冬の足音が聞こえてきた。 しかし、こんな季節の移ろいの日々は、 私には、年甲斐もなくちょっと浮かれた時となっている。 衛の出向が決まり、それに付いて行くと決めた頃は、 すでに一緒に住んでいた上に、間もなく結婚もしたから その延長の日々が待っているだけだと思っていた。 だが私の予想は、思いがけないハズレに転じたようだ。 お蔭で、こちらに移ってからの私には、 今まで味わった事のない新鮮な毎日が待っていた。
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