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へっ? まったく予想外の提案に、いささか驚いた。 しかし次の瞬間、私はにわかに焦りだす。 「あっ、そう、よね」 なにせハワイといえば、彼のご両親がいる場所。 だが実は、様々な事が急展開する中で籍を入れ、 その後、すぐに彼が新たなプロジェクトに入ったこともあり、 私はきちんとした挨拶どころか、まだお二人に会ってすらいない。 つまりこれが、名実ともに結城家の嫁として初めてのご対面。 しかも、彼の実家で――。 そんな緊張感ににわかに包まれ、 私は、なんとなく言葉までがぎこちなくなる。 「衛のご両親に、ちゃんと結婚のご挨拶に行かないと……、だもんね」 しかし、これは彼の予想外だったようだ。 一瞬「えっ?」と言葉を詰まらせた彼が、柔らかく苦笑を広げていく。 「まぁ、せっかくあっちに行くから顔くらいは見せたいと思うけど。 でも、俺の目的はそれじゃないよ」 は? 私の頭に、「?」が数個浮かんだ。
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