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私が勤めるお店は、小さなレストラン。個人経営の地元に愛されるお店を目指す元店主より、今の店長が受け継いだ。
私は基本的に接客と事務を担当し、狭いながらも小さなテーブルが並ぶ店内を歩き回り、手が空くと裏の事務所でパソコンとにらめっこ。
店長はというと調理場にも入り、接客もする。当然のごとくお客様には大人気。特に女性客。
「今、帰り?」
「……はい」
「女ひとりでこんな時間にふらつくもんじゃないよ」
そう言ってスマホを取り出す仕草の手慣れたこと。二、三言葉を交わした相手がタクシー会社の受付じゃないことは、知ってる。
「帰るぞ」
「お母さんに電話したの、お兄ちゃん」
家まで徒歩。同じ家に帰る。
「外ではそう呼ぶなって言ってるだろ?」
「……店長はどちらへお出掛けでしたのですかー」
「…………。コンビニ」
お店は当然閉店している。電気も落とされ誰もいない。
「お腹すいたのね」
こちらの店長様。小さいとはいえレストランの主でありながら、全くお料理が出来ません。
シェフは私達"三兄妹"の一番上の姉が勤めます。
「だって、卵が爆発するんだ……」
*End*
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