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年上。なのに、それを感じさせない人懐こい笑顔。
男。なのに、同僚の女子より優しくてあまい目尻。
長身。なのに、150センチの私にまで目線を合わせる気遣い。
イケメン。なのに、気取らず気さくで人気者。
上司。なのに、部下にも偉そぶらず同じ目線で聞いてくれる。
社交的。なのに、やっぱり上司だから厳しいトコは厳しい。
……完璧。
あの人にマイナスなイメージなんでつけられない。
"なのに"の後の話をすると、友達はみんな羨ましがるんだ。
そんな話で盛り上がった同級生との女子会。ほろ酔い気分の帰り道、話題の上司と出くわした。
「……あ、店長」
「ん。暮野」
私―――暮野(くれの) えり―――が勤めるお店の、店長様だ。
街灯と居酒屋などの夜のお店のライトがぼんやり照らす道端。店長はほんの少しネクタイを緩めたスーツ姿。長い足。ナチュラルな立ち姿なのに他と違う。様になる。
「なんだ、呑みの帰り?」
ぐい、と腰を曲げて顔を近付けてくる店長に、私は半歩後退り、視線をそらす。
おまけをつけるなら、その声も。なのに、唯一私には……響かない。
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