番外:精霊の夜と王の願い・3

5/8
580人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ
「あちらにボタン飾りが。シュウ殿に似合うのは……」 「イチハ、そんなに要らない」 「俺がシュウ殿のものを選びたいんだ。たまの我儘だからもう少し付き合って」 ちょっと困ったような顔をしながらも、俺の買い物に付き合ってくれる。 シュウ殿は上質なものが一つあれば、それ以上買ったりすることは滅多にない。 こういう買物には慣れてないはずだけど、楽しそうにしてくれている。 結局、髪紐にはじまり五~六点の買物をしてしまった。 「イチハは何か欲しい物はないのか?」 「ふふっ。俺は今貰ったから」 「何か買ったのか?」 「シュウ殿の身につけるものを一緒に選んで、シュウ殿が笑ってくれて……はぁ……幸せだ」 「イチハ……」 シュウ殿が額に手を当てて空を見上げた。 少しはしゃぎすぎただろうか。 不安になったけれど、シュウ殿がさりげなく肩を抱いてくれる。 「年またぎに一緒に出かけられなくて済まなかった。今イチハとこうやって過ごせて私も楽しいよ。ありがとう」 ……ふぁ……シュウ殿の目が…目が…ああ、幸せに輝いてる。 あああああ……嬉しい。 幸せだ。 ダメだ…また頭がお花畑になってしまった…。 「……イチハ、フラついているな、疲れたのか?もう、宿に戻ろううか」 もちろん疲れたわけじゃない。シュウ殿にメロメロで頭に血が上っているだけだ。 けれど、俺はその言葉に従って宿に戻ることにした。 ◇ 祭で賑わう街を歩けば、様々な匂いが染み付く。 宿に戻ると気になって、すぐに湯を浴びた。 疲れているとは思っていなかったけれど、風呂あがりにベッドに寝転べばすぐに寝入ってしまった。 優しい感触があって、目を開けると目の前にシュウ殿の凛々しい顔があった。 鋭い目が優しく緩んでいる。 つられて俺にも笑みが浮かぶ。 ああ、やっぱり目元のホクロがセクシーだ。 指でなぞるとキュッと目をつむった。 そのままシュウ殿の頭を抱き込む。 まだ少し髪が濡れている。そんなに長く寝てはいなかったようだ。 シュウ殿の背中をポンポンと叩く。 「年末もお仕事お疲れ様でした。それから、祭りに連れきてくれてありがとう」 「楽しんでくれたか?」 「すごく楽しかった。シュウ殿がこういう祭りに興味があるなんて思わなかったな」 「……それは…コウガランに勧められたんだ。あいつはこういうことに詳しいから」 「そっか。少将にも感謝しないと。でもやっぱりシュウ殿に感謝だ」
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!