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「あちらにボタン飾りが。シュウ殿に似合うのは……」
「イチハ、そんなに要らない」
「俺がシュウ殿のものを選びたいんだ。たまの我儘だからもう少し付き合って」
ちょっと困ったような顔をしながらも、俺の買い物に付き合ってくれる。
シュウ殿は上質なものが一つあれば、それ以上買ったりすることは滅多にない。
こういう買物には慣れてないはずだけど、楽しそうにしてくれている。
結局、髪紐にはじまり五~六点の買物をしてしまった。
「イチハは何か欲しい物はないのか?」
「ふふっ。俺は今貰ったから」
「何か買ったのか?」
「シュウ殿の身につけるものを一緒に選んで、シュウ殿が笑ってくれて……はぁ……幸せだ」
「イチハ……」
シュウ殿が額に手を当てて空を見上げた。
少しはしゃぎすぎただろうか。
不安になったけれど、シュウ殿がさりげなく肩を抱いてくれる。
「年またぎに一緒に出かけられなくて済まなかった。今イチハとこうやって過ごせて私も楽しいよ。ありがとう」
……ふぁ……シュウ殿の目が…目が…ああ、幸せに輝いてる。
あああああ……嬉しい。
幸せだ。
ダメだ…また頭がお花畑になってしまった…。
「……イチハ、フラついているな、疲れたのか?もう、宿に戻ろううか」
もちろん疲れたわけじゃない。シュウ殿にメロメロで頭に血が上っているだけだ。
けれど、俺はその言葉に従って宿に戻ることにした。
◇
祭で賑わう街を歩けば、様々な匂いが染み付く。
宿に戻ると気になって、すぐに湯を浴びた。
疲れているとは思っていなかったけれど、風呂あがりにベッドに寝転べばすぐに寝入ってしまった。
優しい感触があって、目を開けると目の前にシュウ殿の凛々しい顔があった。
鋭い目が優しく緩んでいる。
つられて俺にも笑みが浮かぶ。
ああ、やっぱり目元のホクロがセクシーだ。
指でなぞるとキュッと目をつむった。
そのままシュウ殿の頭を抱き込む。
まだ少し髪が濡れている。そんなに長く寝てはいなかったようだ。
シュウ殿の背中をポンポンと叩く。
「年末もお仕事お疲れ様でした。それから、祭りに連れきてくれてありがとう」
「楽しんでくれたか?」
「すごく楽しかった。シュウ殿がこういう祭りに興味があるなんて思わなかったな」
「……それは…コウガランに勧められたんだ。あいつはこういうことに詳しいから」
「そっか。少将にも感謝しないと。でもやっぱりシュウ殿に感謝だ」
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