番外:精霊の夜と王の願い・3

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「シュウ殿、ありがとう。ありがとう。ありがとう」 背中を撫で、頭に頬ずりする。 「……」 困惑する気配がしてるけど、気にしない。 だって俺には使命があるのだから。 そう、それは、シュウ殿を癒し甘やかすこと!! ……まあ、ただ単にアジュラン陛下の真似をしつつイチャイチャしたいだけなんだけど。 陛下の言葉を参考にするならば、しつこくナデナデと可愛がり続けていれば…。 ふぁ、本当にフッと力を抜いて身を任せてくれた。 ああ、嬉しい。 だらしなく顔が緩んでもシュウ殿には見えていないので大丈夫だろう。 甘やかされてる気分になってくれているのかはわからないけど、俺は『猫っ可愛がり』を満喫だ。 そっと俺の腰に手が回される。 ふぁ……。シュウ殿が甘えて抱きついて来た!! いつもなら『抱きしめられた』と思うところだろう。 けど、意識が違うだけで、トキメキかたも変わるらしい。 はぁぁぁ……。 ちょっと俺の胸に顔をすりけてきてくれた。 たまらない……。シュウ殿が可愛い。 ああ、可愛い…。 可愛い…。 髪を梳くようにように撫で、そっとシュウ殿の顔を胸に押し当てる。 ……けど…あ、いけない。 シュウ殿の手がシャツの裾を割り、唇が薄いシャツ越しに俺の胸を……。 まずい、このままじゃ俺はあっけなくシュウ殿に喘がされる。 ここは…。 「どうしたの?今日は随分甘えんぼさんですね」 「……」 俺のセリフにシュウ殿が小さく動揺した。 「シュウ殿、ギュッてしてあげます」 ただ抱きついただけだが、シュウ殿が少し恥ずかしそうにしている気がする。 「ギュッ、ギュッ」 いつもなら強く抱きしめ返してくれる腕が弱い。 けど、そのせいで『抱きしめてあげている感』は出る。 「どうした…イチハ」 「どうしたって…今日はシュウ殿が甘えんぼさんなだけだよ」 「いや、そんなことはないと思うが」 「……気付いてないの?ということは、無意識ですごく甘えたがってるんだ」 「……そう…?なのか?」 頬に手をあて、眉根を寄せた。 「シュウ殿、可愛い」 シュウ殿が目をむいた。 そして薄っすらと頬が赤く染まる。 「……」 何も言えず視線をさまよわせるシュウ殿の額に、そっとキスをした。 「可愛い……」 まぶたに、鼻先に、そして頬にキスをする。 少し困った顔はしているが、なすがままだ。 はぁぁぁ……本当にシュウ殿が可愛い。 けど、自分のスキル不足が恨めしい。
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