柴原純五郎2

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「そういうお前は何なんだ、職業」 「僕ですか。僕はねぇ」 俺の中でこいつのキャラが未だに安定しない。 時代劇キャラ。プライベートでの普通キャラ。このギルドでの婚活キャラ。 今は普通キャラってか? 英知がニヤリと笑みを浮かべる。その笑みを見た瞬間、少しヒヤリとする。英知が全く別の人間に見えた。 それは俺が初めて見る顔だった。 今までは中身がコロコロ変わっていたんだが、今回は顔が変わった。 何なんだよ、その表情は。 刑事をやってきているからそういう顔はよく目の当たりにする。 けど、それをこいつがするのか。警察官であるお前が、何故そういう表情を作れる。 楽しそうに笑うそれじゃない。 何か別の事を考えながら、でも表だけで笑っているような、作り笑顔。 今まで何度か目にしたことのある、人殺しの顔。 こいつの新しい仮面。犯罪者の仮面。こいつは、一体何なんだ。 「ペテンシ。詐欺師ですよ」 「あー」 声だけお気楽な返事をする。動揺を悟られないようにする。まぁポーカーフェイスは俺の得意技だから大丈夫なんだが。 詐欺師か。お似合いだよ。誰がなんと言おうと俺が保証してやる。 そんだけ顔も中身も変えられれば万人だって騙せるさ。今の顔も、どうせペテンなんだろう。 嫌味なくらいぴったりだよ、まったく。
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