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「えっと……。あなたは?」
「一晩を共に過ごした相手の名前も忘れたの?
所詮私とは遊びだったって訳ね」
いやジュース片手に本を読みながら、棒読みでそんな事を言われても。
何て返したら良いのか分からない。
「冗談よ」
「…………」
笑えない。京介さんならケラケラ笑うんだろうけど、あいにく僕の心はあの人ほど寛容にできていない。
「あら。うなされていたみたいだから寝起きに冗談でも言って笑わせるつもりだったのに、失敗かしら」
笑わせるつもりだったのか。だとしたらもっとライトな冗談をお願いしたい。
そんなドロドロの冗談を持ってこられても学生の僕は対応に困る。
寝起きにすき焼きでも食べさせられるイメージだ。
「せっかくのお心遣いありがたいんですけど、僕は今の状況が分からなくて混乱しています。
良ければ教えてもらえませんか?」
相手は長い黒髪の女性。歳は20代だと思うけど、大人びた感じが出てるからもっと上の年齢を言われても納得できる。
背筋がピンと伸び、椅子に座って本を読む姿が様になっている。
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