雨森時雨3

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さっきから本にばかり目をやっていた彼女が、初めて僕と目を合わせてくれた。 可愛いと表現するより、美人といった方がしっくりくる。 どこかのお嬢様みたいな人だ。 「あなた。あれだけ激しくしておいて何も覚えていないの?」 「もうそれはいいです」 話が前に進まない。見た目と中身がそぐっていない。 「森であなたが倒れていたの。 それを見つけた私がここまで運んで来たのよ」 彼女がトントンと自分の胸を指差す。いや、そんな所を指差して何を言いたいのか。 またさっきの続きか?と身構えたが、そうではないらしい。 ベッドから勢いよく起きたせいで布団がまくれ、僕の上半身が露わになっていた。 服が無かった。 「なっ!何で!?」 咄嗟に色々な所を隠した。 色々だ。 「見つけた時にあざが少しあったから。脱がせてもらったわ。 別にあなたの貞操は奪ってないから安心しなさい」 別にそんな心配はしてないが。
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