雨森時雨3

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「服は畳んであるわ。 向こう向いてるから着替えなさい。 話はそれからにしましょう」 くるりと反対側を向き、彼女は本に目を落とした。 僕はベッドの隅にあった服を掴み、急いで着用する。 パンツだけ脱がされていない。 さすがにそこだけはこの人でも躊躇われたのだろう。 容赦なく全部剥きそうな第一印象があるから、少しホッとした。 「あの……。助けてくれてありがとうございました」 「礼には及ばないわ。当たり前の事をしただけだもの」 当たり前の事。それを出来る人間がいったいこのゲームの中にどれだけいるのだろう。 このゲームの中は当たり前じゃない事をするゲームなんだから、僕は運が良かったのだと素直に喜ぶべきなんだ。 犬じゃないが、拾われた人が良かった。親切だった。
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