雨森時雨3

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「何?聞いて欲しいの?Mなの?」 「いえ別にMではありませんが」 別にもっと聞いて欲しいとも思わない。ただ虚を突かれたというか、意外だと感じただけだ。 神頭さんは無表情のままテーブルに置いてあるジュースに口を付けた。 「聞いても話したくないでしょう。 この世界は情報が全て。自分を晒せば晒すだけ勝負に負けて牢屋に送られる危険性が上がる。 私は別にあなたを牢屋に送りたい訳ではないから何も聞かない」 彼女はテーブルにジュースをコトンと置いた。 グラスに入ったオレンジ色のそれは、カランと氷が溶けて音を鳴らす。 「納得してもらえたかしら?」 彼女のその言葉は、僕がペラペラと自分の事情を話したくない理由の模範解答みたいな物だった。 全く持ってその通りだ。この世界の人間は基本的に信用してはいけない。 自分の情報は出来るだけ少なく小出しにし、相手の情報を出来るだけ多く引き出す。 彼女もみた限りでは身体を張るタイプではないから、僕と同じで言葉の一つ一つに気をつけているのだろう。
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