雨森時雨4

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僕の耳に寂しげな音が響いた。 電話が繋がらない。携帯の音声ガイダンスが流れるだけ。 電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないため……。 それを聞くと、胸が締め付けられるように息苦しくなった。 神頭さんにお礼を言って僕は宿屋の中でログアウトした。 ログインする時は首輪を付けてタブレットでログインを押せばいい。 ログアウトした所とログインする所は同じになるそうなので、僕はあまり長くは現実世界に滞在できない。 宿屋の費用が1日1万円。とてもではないが、さすがにその値段は学生の僕にはきつい。 現実世界というのは間違った表現だと教わったが、別にそれ以外の表現が思いつかないのでそのまま使う事にした。 そっちの方が分かりやすい。 最初にログインしたのは自室だったので、ログアウト後も同じ自室に帰ってきた。 母親と父親は帰ってきていないらしい。 まぁいつものことだ。 僕の両親は何をしているのかは知らないが、世界中を飛び回る仕事をしている。 詳しくは全然知らない。教えてくれない。
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