⑤ 告白

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放課後。 カフェでたわいもない話を終えた帰り道。 「ねえ、沙耶。もうちょっと話してかない?」 公園の前。 「うん。いいよ」 ベンチ。 俺の手にはブラック無糖の缶コーヒー。 彼女の手にはカフェオレ。 「寒くない?大丈夫?」 俺は、さりげなく着ていたアウターを脱ぎ、彼女の肩にそっとかける。 「ありがとう。でも、間宮くん、大丈夫?」 「大丈夫。俺は鍛えてるから」 両腕で力瘤を作り、片膝を地面に付き、アメコミのスーパーヒーローのようなポーズ。 「ふふ。間宮くんって面白いよね」 「へへ…」 俺は照れ笑いを見せながら彼女の隣に座る。 彼女の肩に手を伸ばし、さっき掛けてあげたアウターを掛け直す。 「ありがと」 「いや」 そのまま手を彼女の腕のあたりまで下し、アウターの前を合わせてあげるようにしながら、流れでギュッと抱きしめる。 「なあ、俺たち…」 「…え?」 「付き合わない?」 「…うん」 恥ずかしそうにうつむく彼女。 だが、その華奢な手が、抱きしめる俺の手の上にそっと重ねられる。 照れる沙耶にやさしく声をかける。 「ありがとう」 俺の声に答えるべく、うつむいた顔をこちらに向ける。 瞬間――。 前触れなしのキス。 一瞬、驚きに身体に力を入れる彼女。 しかし、まぶたを閉じた彼女の身体からは次第に力が抜け、行き場を失ったその力は、重ねられた唇のみにそっと、やさしく注がれる。 短く、長いキス。 静寂に包まれた公園には俺たち二人きり。 夜空に輝く月がただ一人、祝福の光を浴びせる。 完璧だ。 理子が集めたデータベースの中から“理想の告白”に関するデータを抽出、分析し、練りに練り上げたシナリオ。 見るがいい。 キスを終えた後の沙耶のこの笑顔を。 (にこっ) エンジェルスマイル。 この笑顔はもう、俺のものなのさ。 「もう、離さないよ」 …フッ。決まった。
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