③ ありがちなミラクル

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翌朝。 学校。 「おはよー」 「おう」 「おはよっ」 「おう」 「祐輔君、おはよー」 「おう」 「よ、祐輔」 「おう」 声をかけてくるクラスメイト達。 「なんだ?祐輔。ボケっとして」 「あ?ああ…」 あれから、俺は、ひとつの事だけを考え続けている。 どうしたら男、間宮祐輔として彼女、サヤに近づく事ができるのか。 格好よく。颯爽と。自然に。 理子の名で街へ誘い出し、当日、風邪を引いたとドタキャン。 待ち合わせ場所に現れる俺。 自然に声をかける。 「どうしたの?待ち合わせ?」 …だめだ。全然自然じゃねぇ。ただのナンパだ。 待ち合わせ場所からトボトボと帰路につくサヤ。 その後ろを歩く俺。 ふと、サヤがハンカチを落とす。 「あの、落としましたよ、お嬢さん」 「ありがとうございます。お礼にお茶でもいかがですか?」 …だめだ。そんな都合のいい事、起こりえねぇ。 『ガラガラ』 「おはよう、みんな。今日は皆に新しい仲間が出来た。転校生の、泉沙耶さんだ」 転校ね…だから、漫画じゃあるまいし、そんなミラクルが…って、泉?誰? 「泉、入りなさい」 「キャー」 「かわいいー」 「びじんー」 「やべー」 「まぶいー」 って、入ってきたのはサヤ?? 転校?? 「さぁ、泉、みんなに挨拶を」 「初めまして。泉沙耶です。よろしくお願いします」 ええーーー! ありがちなミラクル、キターーー!! 「席は、間宮の隣、空いてるな。あそこに座りなさい」 ええーーー! 都合よく誰も座っていない机が俺の隣にー!! 「間宮くん、でよかったかな?」 「お、おう」 「よろしくね(にこっ)」 キターーー!エンジェルスマイル! とにかく、ラッキーーーー!! てな感じで、都合よく、俺様の学園天国生活は幕を開けたのだった。
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