「抱きたい男」side HiBIKI 4

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「溝畑さん」

ショースペースの小稽古部屋で、大道具が起てる金槌のリズミカルな音が響く中、加藤繭香の声がふいに聞こえた。

俺の傍にいた溝畑は、一瞬俺へと怯えた表情をみせたあと、加藤繭香へと振り返った。

埃と、木片のかけらが舞う舞台袖の梁の影から、加藤繭香がこちらへと近づいてくる。

折れそうなほどに細い脚に黒のピンヒール。

黒いペンシルスカートのせいか、彼女の腰のくびれと、足の細さのコントラストを強調しているように見えた。

「はい、なんでしょうか」

溝畑は、慌てた様子で、台本を背中に押し込んで、急いで彼女へと歩いていく。

徐々に距離を縮める溝端へと、彼女は微笑んだ。