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ケースケくんの行動は素早かった。
この忙しいのに休みを都合すると、沖縄のホテルを予約してきて、
「キミには休みが必要!」
と意味も分からぬ間に連れていかれた。
あのぉ。
沖縄は結構ですが…
温泉の方がありがたいのですが。
と頭で考えても眠すぎて。
まぁいいわ。
少し早い春を楽しむのも。
焼き物を見て周り、
景色に歓声を上げた。
夕方、ホテル近くの海岸を散歩していると、
横にいたはずのケースケくんが、いない。
振り返ると、ケースケくんが応援団みたいな調子で声を上げた。
「篠田夕実さんっ!」
…へ?
「アナタの笑顔と!大きな声では言えないところにホレました!」
は、はぁ…
「年商はマダマダだけど!これから必ず大きくして見せます!」
あ、ああ…ゼヒ
「僕の嫁さんになってください!」
…
「そして子供を作って!日本の少子化問題を解決して行きましょう!」
吹き出した。
な、なにそれ!
「お願いしますっ!!」
ケースケくんが、ヒザまずいた。
捧げられた手に、指輪がある。
分かりやすすぎて、
恥ずかしくて、
おかしくって、
笑いが止まらない。
だけど、やっぱり一番の感情は『嬉しい』だった。
笑い転げながら、ケースケくんの手を取った。
ケースケくんが、立ち上がる。
周囲から拍手と歓声がわき起こった。
気づいたら、泣いていた。
ケースケくんの胸のなかで、泣きじゃくっていた。
「キースッ!キースッ!キースッ!」
と、コールがかかった。
ケースケくんが、手であおる。
バカッ!と手を下ろそうとすると、上からキスが降ってきた。
またも歓声。
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