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実家を建て直したのは、私が社会人6年目、弟が4年目のことだった。 ジャズ狂いの父親が、聞きたくない額のお金をかけて、オーディオルームを作った。 「自慢の我が子」の話を聞いてくれる人なら誰でもいい!とばかりに、近所中の人やら職場の後輩やらを呼び集めて、休日ともなるといつも誰かしらが家にいる。 よかったね、お父さん。 私も弟の裕之(ひろゆき)も中学校から大学まで私立で、大変だったもんね。 母親はというと、こっちは市役所勤めの公務員で、「まぁ好きになさいよ」と休日も自分が企画したスポーツ大会や農業体験に精を出している。 私も休みは不定休だった。 自分のせいだけど。 外資系の会社に憧れて、必死の思いで入社したけど、根本的に能力が足らない。 同僚が軽々とこなす仕事ができなくて、いまだにプレゼンは段ボール一杯の資料を読んでも「え?なにが分かったって?なんにも」という具合だ。 今日も世間は連休。 「行ってきまーす」 私は国会図書館で資料集め。 弟の高校時代の同級生、佐々木省吾(ささき しょうご)と知り合ったのはそんな時だった。
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