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あの人は、寂しかったのだ。 独りで生活することに疲れていたんだ。 ひたすら、それだけだったんだ。 私のことを何でも見抜いていたくせに、それを利用も悪用もできない、真っ直ぐな人だった。 なぜ私のことを『タカネノハナ』だなんて思ったの? そんなんじゃないって、何で分からなかったの? プライドの高さを利用して、寂しい、お前しかいない、結婚したいって、 ただそれだけ言い続けていれば良かったのに。 あんなんじゃ、分からないよ。 だってアナタが初めてだったんだから。 顔に手をやった。 「好きです」と言われた時の心臓の高鳴りや、 「はなさない」と言われた時のじんわりした気持ちを思い出した。 さようなら。 これが、本当のさようなら。
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