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親戚の「あーらお姉さんはまだなの?じゃあ頑張らないといけないわね~」のウェディングシャワーをくぐり抜け、
嗚呼、お店。やっぱりここが安住の地。
高橋くんがやって来たのは、そんな秋のことだった。
大きな菓子折を押しつけると、手を合わせて懇願された。
「来月の25、26空いてない!?」
「シフトはまだ作ってないですけど、何ですか?」
「オネガイオネガイオネガイッ!展示会の店番やって!」
「えええ~?」
「人いないんだよ。立ってるだけでいい。一応、パンフレット見ながらでも説明してくれると、なお有難いんだけど」
カレンダーを見ると平日だった。
「連休なんか初めて取りますよ」
「やってくれる!?ありがとうぅぅぅ!」
「もうパンフレットください。勉強しますから。いらっしゃいませ~春木さま」
「じゃあじゃあ今夜どう?打ち合わせもかねて」
「今日は帰ります。明日、店長会なので。春木さま、人形供養なんですけど、段ボールで送ってかまわない所がありましたよ」
高橋くんは泣きそうな声を出した。
「さみしい…」
「は?」
「もうずっとビジネスディナーばっかり」
「もう接客中なので帰ってください」
春木さまが眉を寄せた。
「アンタ、行ってあげなさいよぉ」
「えー?」
「オトコっていうのは、弱い生き物なんだから」
「本当にそうなんですよ。さすがですね!」
まったく、もう…
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