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高架下の居酒屋で名刺を受け取った。 『株式会社オーガスト 代表取締役 高橋慶介』 「社長になっちゃってますけど…?」 「友達がさ、オンナ連れて国に帰っちゃった。社名だってそれ、その彼女の誕生月なんだよ?それなのにさ」 「あらまぁ…」 高橋くんの会社は、家庭用医療機器の代理店販売をしているそうだ。 「また、面倒なところに手を出しましたね」 「わかる?1つ売り出すのにも手続きが、さぁ。コレ、この資格取ってくれないかな?コレ取ってもらえると、色々今後も助かるんだけど…」 「今後もって…」 「もうウチの社員になっちゃいなよ!」 あきれ果てて、焼き鳥を置いた。 「何を言ってるんですか…私の仕事っぷり覚えてますでしょ?」 「覚えてる!絶対に休まなかったし!絶対に怠けなかった!勤続10年!」 「9年です…」 「頼むよ。もう面接するの疲れちゃった」 「人材って居ないものですよね…普通でいいんですけどね…」 パートさんが出産で一人辞めて、新しく入ってきた女の子もどうも辞めそうな雰囲気だった。 これで三人目。 「そんなのまだいいよ。ウチなんて、面接だけ受けて入ってきてもくれないんだよ?」 「給料が低いんですね」 「そ、そんなズバリと…」 「あと経営者の人徳?」 「それは問題ない。うん」
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