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休みの日には、高橋くんの仕事を手伝うようになった。 会社経営ってすごいね。 小舟で、太平洋を横断するようなものだ。 すっごい勇気と忍耐力。 高橋くんには、恐れ入る。 『篠田さん』が『しーさん』になった頃、ようやく退社するのが自然な気持ちになっていった。 「任してください。この辺の店はすべて知ってます」 「じゃあ、しーさんに任せちゃお」 こんな率先して、オーガストの取引先と飲みに行っちゃって、社員じゃありませんておかしいでしょ…。 お客さまに、お礼状を書いて、新しい仕事先を伝えた。 久しぶりに本社へ行って挨拶周りをした。 桐生さんは結婚してワシントンへ行き、 ナナちゃんは結婚後も仕事を続けている。 私のデスクのあった場所は、別の誰かの生活の場になっていた。 たくさんの人が、ブーケやプレゼントを用意してくれていた。 こういう事が本当に好きな人たちの会社なんだ。 きっとこれからも続いて行く。 ビルを見上げた。 「タカネノハナでした」 だけど、ありがとう。
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