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この時点で、本当に高橋くんとの仲は何もない。
退職するときに、それはさんざん聞かれたけれど。
忙しくて、会社で寝ちゃうこともあった。
目が覚めると、高橋くんもイスで気絶してる。
この人の会社に入るとはねぇ…
こんなこと、いつかもあった。
人のご縁って不思議だ。
そっとコートを取って表に出た。
さっむい。
それでももうすぐ春。
「しーさん!」
振り返ると、高橋くんが追っかけてきた。
「起こしてよー」
「だって気絶してましたよ?」
「もう終電ないんじゃない?」
「歩きます。JRはまだ動いてるから」
「遠いいよぉ」
「歩くの好きなんで」
高橋くんは、まだ眠たそうに首を回した。
「俺んち泊まってけばぁ?」
「イヤですよ。落ち着かない」
寝ぼけた声で、高橋くんがぼやきだした。
「…そうやって、しーさんは絶対に断る。傷つくよぉ」
「入社しましたでしょ」
「前もさぁ『また飲みに行こう』って言ったら『ええ、そのうち』とか言うでしょフツー
。それがさ『趣味が忙しい』ってバッサリ。その次だって『次の日が店長会』?」
「そんなこと言いました?」
「言いました」
言ったんだ?
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