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キッチンからリビングに戻ると、何か違和感があった。 いつもソファーに座っているのに、 体格からしてその方が理にかなってるのに、 ダイニングテーブルに座っていた。 「窮屈じゃない?」 「あ、ダイジョブです」 「え?お腹すいてる?」 「食べてきたんで」 なら、いいけど… テレビをつけようとしたけど、考えたらもうオーディオルームに案内してあげれば良かった。 「ヒロくんを待つ?それとももう行く?」 省吾くんが、ちょっと困ったように言った。 「少し話せない?」 いきなり、敬語が…どっか行ってるし。 「いいけど…」 もちろん、いつも通り目を通したいものがあった。 だけど、パラパラめくればそれで済むカタログだ。 どっちにしろ、裕之がもう帰って来るんだろうから。 私は座って、自分のお茶を飲み始めた。 話せない?って言ったのに、省吾くんは話さない。 武士のような人だ。 「お仕事は忙しいの?」 「これから、年末年始は」 「大変だね。警備とか?」 「そう。そういうのがけっこう…」 しーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん やっぱりテレビつけようかな… リモコンを目で探しだした。 「ユウミさんは、クリスマスの予定ある?」 「な、ないです」 ビックリした… 名前で呼ばれた。 「カレシは?」 「カレシ…?カレシなんてそんなもの生まれてこのかた…」 オーイ! なに言っちゃってるー! 顔が真っ赤になった。 「か、カレシは、なかなかムズカシイモノですよ。私、ずっと女子校で、大学も女子ばっかりで…」 「オレもいません」 「そ、そうなの。お忙しくてらっしゃる…」 いないんだ。 けっこうカッコいいのに。 こんなオトコ!って感じの人にすらカノジョがいないこの時代、 少子化問題はいよいよ深刻… 「ちょっといいですか?」 そのオトコ!が立ち上がった。
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