第1章

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 が、流輝はそれを見ても、特に何も感じていなかった。  それよりも、気がかりなことがあったからだった。   それは三体の『イタクァ』を葬った謎の襲撃者である。  「どこにいるんだ」  流輝はそう呟くと、辺りを見渡し、襲撃者を探した。  同じころ、『シャンタック』内部にて、搭載されている観測機をフル回転して『クトゥルフ』の情報を得ていた、情報処理班の男が一人が声を上げた。  「大変です『SANレベル』が低下しています」  その言葉を受けて、特等席で戦闘を見ていたミゼルは、反応し、問いを投げかける。  「何?それは本当か?」  「えぇ、これ以上刺激するのはよくないかもしれません」  「そうか……」  ダーレスは数値を見て納得すると、通信回路を音声のみにして開き、今、戦闘中のミリアに連絡を取った。  「ミリア、撤退だ、これ以上刺激してはマズイ」  『え……でも……』  「いいから、契約者は割り出せると思うから、はやく」  『しかし奴らが回収するかも知れませんし…………』  「その点は大丈夫だ、半径一〇〇?q圏内に敵の反応は無い、それに『SANレベル』が低下している今、お前の反応が消えれば、契約者の安全から、『クトゥルフ』は帰還する、だから大丈夫だ」  『……わかりました、撤収します』  ミリアは渋々ながら納得すると通信は切って、その二分後には無事ミリアは『シャンタック』に撤収した。  大きな物がいきなり乗ったため、一度ガクンと期待が沈み込むが、すぐに持ち直すと、元の高度に戻った。  そして『シャンタック』は大きくUターンすると、『イカン』に向けて進路を取り、帰ることとなった。  が、流輝がその姿を見ることは無かった。  なぜなら、いきなり『クトゥルフ』内部の映像が消え、真っ暗になり、それと同時に流輝の意識も消えた。    次に流輝が目覚めたとき、そこには知らない天井があった。  薄目を開けて天井を見上げているのだが、そんな不明瞭な視界でも、知らない天井を見上げているのだと分かった。  それだけ見慣れない物だったのだ。  「…………」  流輝は何とか体を起こし、辺りを見渡すと、そこには地元の少し大きい病院の個室であるということが分かった。  近くのダッシュボードには籠に入ったリンゴや桃、他に花瓶に活けられた百合の花が飾れていた。  頭に違和感を覚えた流輝は、触ってみて初めて頭に包帯が巻かれていたのだ。
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