第1章

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 「南緯四七度九分西経一二六度四三分、よくここまで来たものだな」  「日本まであと一週間、具体的には六日と二○時間四九分です」  「と言うことは…………」  ダーレスはそう呟き、考え込むと、一言つぶやいた。  「なら、やはり日本に契約者がいるのか」  「はい、そうかもしれません」  「星辰が正しくなって三日か……」  「はい、ルルイエの破片もできうる限りは回収してあります」  「そうか、何か情報を得られるといいのだが」  そういうと、ダーレスは自分の携帯端末を取り出すと、それを起動させ、報告をしていた男のパソコンを借りると、ケーブルでつなげて、何やら作業を始めた。  「契約者を見つけるより先に確保だな」  「そうですね」  喋りながら、エンターキーを叩く。  すると、新しい映像が次々と投影されていった。  そこには無骨なデザインをした巨大なロボットと、それの稼働率に関するグラフや、起動できる機体についての情報が投影された。  最新の情報が常時送られていて、数値が次々と変動していく。  それを見て、ダーレスは微妙な顔を浮かべる。  「ちっ……『コス―G?U』は出撃できないか」  「はい、鏑木工業から納品されてまだ三日です、パイロット候補もまだ来ていません」  「『シャンタック』はいけるか?」  「はい、と言うことはミリアを?」  「そうだな……」  そういうと、ダーレスはもう報告が無いことを確認すると、部屋から出て電話をかけるといろいろな準備を始めた。  五日後  「おばさん、ちょっと出かけてきますね」  「はいはい、流輝君、気を付けてね」  「分かってますよ」  「ところで……」  「はい?」  「どこ行くの?」  「…………コンビニです」  立木流輝は家から出てコンビニに向かう。  あの事件から十年たち、流輝は立木のおばさんの養子になっていた。結婚せず、生涯独身を貫くつもりだったらしいが、流輝を大学卒業まで育ててくれるらしかった。  他に頼る当ても無かったので、流輝はありがたくその申し出を受けたのだった。  そして、今ではもう高校二年生  この春に無事に進級し、大学進学に向けて頑張っている。  将来の夢は特にないが、これから見つけるつもりでいた。  今日は学校が休みなのだが、あまりにも暇なのでコンビニに行き、週刊マンガ雑誌を買おうと思ったのだ。  その時海風が吹き、海特有の香りがする。
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