社にて

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社にて

「行こう、ひめ丸!」 飼い犬のリードを引っぱり、少女が駈け出す。 鳩たちが一斉に舞い上がるのにも構わず、一直線に鳥居まで。  階段を降りる前に振り向いたのは、少年と別れの挨拶を交わすためだ。 中学に上がって以来、会うこともめっきり減った幼なじみ同士。 でもこうして同じ社会で生きているんだと確かめられる。 「それじゃ、またね」 「おう、また」  なんてことのない、いつもの言葉を口にして、それぞれの方向へと進む。 また―― ((社にて会いましょう))  続く言葉は二人とも、胸の中でつぶやいて。
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