6人が本棚に入れています
本棚に追加
社にて
「行こう、ひめ丸!」
飼い犬のリードを引っぱり、少女が駈け出す。
鳩たちが一斉に舞い上がるのにも構わず、一直線に鳥居まで。
階段を降りる前に振り向いたのは、少年と別れの挨拶を交わすためだ。
中学に上がって以来、会うこともめっきり減った幼なじみ同士。
でもこうして同じ社会で生きているんだと確かめられる。
「それじゃ、またね」
「おう、また」
なんてことのない、いつもの言葉を口にして、それぞれの方向へと進む。
また――
((社にて会いましょう))
続く言葉は二人とも、胸の中でつぶやいて。
最初のコメントを投稿しよう!