第4話 里帰り

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「ねぇ七美」 「ん?」 「有り難う」 「何で?」 「何でって、感謝してるからだよ」 「いや、急にお礼なんてさぁ」 「七美がお父さんのお見舞いに行こうって言い出さなかったら、ワタシずっとお父さんのこと嫌いなままだったと思う」 「ああ、そういうことか」 「それに今の樋口くんだって、ずっとただのいじめっ子で、最低な人間だと思ったままだと思うの」 「そっか、じゃあポンヌフのケーキセットで手を打つよ」 七美は行きつけのスイーツショップの名前を出す。 「とりあえずお礼は食べ物なんだね」 ゆつきは思わず吹き出してしまった。 「そんなの基本でしょ?」 七美がニヤッと微笑む。 「有り難う」 ゆつきは七美の腕に自分の腕を組んで身体を寄せた。 二人はよく腕を組んで歩くことがあるけど、ほとんど七美から組んでくることが多く、ゆつきから組んだのは数回しかない。 七美もそれに気が付いたようで、満面の笑みを浮かべるとこちらに体重をかけて来た。 七美と出会えて本当に良かったと思う。 そのお蔭で、幼少時代の灰色だった記憶が、今カラーに変わったのだ。ゆつきは改めて来て良かったと思った。
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