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「お待たせぇ~」
キッチンから声がして、ゆつきは洗面所から出る。
いつも一緒に料理をすることはあるけど、七美が一人で作ってくれたことはないから、少しだけ楽しみだった。
「あれ?」
テーブルの上のお皿には、火の通り過ぎた目玉焼きと、少し焦げ目のあるハム。
サラダとトーストはさすがに大丈夫そうだ。
「何よ?」
「ううん。何でもない」
ゆつきは椅子に腰かけた。
「ちょっと焦げちゃったけど、まぁお腹に入っちゃえば関係ないもんね」
「そうだね」
ゆつきはため息を吐く。
やっぱりワタシがいてやらないと……。
ゆつきは改めてそう思った。
朝食を済ませて二人で家を出る。
会社までバスを乗り継いで通勤する時間も、七美と二人だと楽しい。
こんな幸せが一生続くようにと、ゆつきは今日も願った。
「あ~~~今日は清田デイで、憂鬱だ~~~~」
「そうだね」
「でも、その地獄の時間をクリアすれば」
七美がニヤッと微笑む。
「すれば?」
「ゆつちゃんのお誕生会だよ。ケーキ何にしようかなぁ? やっぱホールで買って蝋燭立てないとね」
七美は子供みたいに笑った。
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