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「じゃあ今度は私が鬼ね」
「だからぁ~~~」
「いいの! やりたいの!」
「もう」
どうせすぐに捕まるのに、ゆつきは仕方なく付き合うことにした。
「じゃあ行くよ」
「うん」
「ペロン」
ゆつきはすぐに柱の周りを走り出す。
一周目を終えるラインで、七美が待ち構えている。
ゆつきはそのまま大きく柱から離れた場所を通過すると見せかけて、方向転換してインコースに切り込んだ。
「あっ!」
七美は慌ててタッチしてくる。
やはりフェイントを使ったところで、マンツーマンだとそう簡単に振り切ることは出来ない。
七美の手がゆつきの左腕に触れた。
やっぱり簡単に捕まっちゃった。
ゆつきはそう思って足を止める。
「え?」
ゆつきのフェイントに一瞬対応が遅れたのに、意地でも捕まえてやろうと思ったらしく、七美は地面に倒れ込んでいた。
「あのねぇ~~~そこまで本気でやらなくても」
「いいの。子供の頃のゆつちゃんの想い出を、少しでも自分のものにしたいんだから」
七美は起き上がると、ズボンの裾をパンパンとはたく。
「もうバカ」
文句を言いながらも、ゆつきは七美の想いが、何だかとても嬉しかった。
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