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「ねぇ次はどこに行く?」
七美はニコニコして聞いてくる。
「そうだね。小学校に行こうか」
「うん」
歩き始めると、七美が腕を組んできた。
もう誰かに見られたらなんて思ったりしない。
ワタシたちは愛し合っていると、誰に白い目で見られようとも胸を張って言えるから……。
五分ほど歩いたところで、理髪店から若い男の人が出て来るのに出くわした。
「あっ」
相手の男がこっちを見て声を出す。
「えっ……」
その瞬間、ゆつきの身体が硬直した。
「ゆつちゃん。知り合い?」
聞いてくる七美の背後に隠れるように移動する。
「え?」
「ワタシを虐めてた人」
ゆつきは小声で七美の耳元に囁いた。
「あの、何か?」
七美がキツイ口調で相手を睨んだ。
「えっ、いや、あの……久しぶりだよね」
七美の剣幕に一瞬たじろいだけど、樋口幸登はすぐに微笑んで話しかけてきた。
ゆつきはそれには答えず、七美の後ろで身体を小さくする。
「アナタ、私のゆつちゃんを虐めてたんでしょ? よく話しかけて来れますね?」
さらに七美はキツイ言い方をした。
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