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「そっか……でも、俺は……」
「何ですか?」
「虐めたつもりはなかったんだ」
「それはそうでしょう。イジメをしてる人の大半は、虐めてるつもりはなかったって言うもんです」
「いや、その……そうじゃなくて」
「じゃあ何です?」
「俺ずっと、彼女のことが好きだったんだ」
「え?」
七美が驚いた顔をすると同時に、ゆつきも目を見開いて驚いた。
「その……上手く伝えられなくて、気を引こうと思ってさぁ……」
そう言われると、幼い頃の男の子って、女の子の気を引こうとして意地悪をするって聞いたことがある。
「なのに、彼女のオヤジさんに家に怒鳴り込んで来られちゃって、うちの親には絶対彼女とは関わるんじゃないって命令されちゃってさぁ」
「その話、ゆつちゃんから聞いたことがあります」
「そう? まぁ、今となっては懐かしい思い出だけど、あの頃君に辛い思いをさせてたなら、ごめん」
幸登は真顔になって頭を下げた。
「もう昔のことだから」
ゆつきに変わって七美が答える。
「うん。でも、今もそうやって彼女の後ろに隠れるところを見ると、まだ俺のことをイヤなヤツだと思ってるんだろうね。本当に申し訳なかった」
幸登はもう一度頭を下げた。
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