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「もういいです」
ゆつきはようやく声を出すことが出来た。
「そっか、あの……」
「はい」
「今年のゴールデンウィークくらいにさぁ、集まれるヤツだけ集まって、同窓会みたいなことをやらないかって話が上がっててさぁ、良かったら参加しないか?」
「それは……」
「いや、イヤならいいんだ。でも、もう俺も大人だし、君が不快に思うようなことはしないから」
「え、ええ、まぁ……」
ゆつきは返事を濁した。
「一応幹事から君の実家にハガキを送るように言っておくけど、実家ってまだ元の住所のままかな?」
「はい」
「そっか、じゃあ」
幸登は笑顔で軽く手を上げると、理髪店の前に停めてあった自転車に跨った。
「じゃあ小学校に行こうよ」
「ああ、うん」
七美に促されて、ゆつきは頷く。
「あの人、ゆつちゃんのことが好きだったんだね」
七美が嬉しそうに横目で見る。
「そうみたいだね」
「小学校時代のゆつちゃんって、可愛かったんだろうなぁ、写真見たい」
「そうでもないよ」
「ねぇ、実家に写真あるでしょ?」
「それはあるけど」
「やった。じゃあ後で見せてね」
七美は満面の笑みを浮かべた。
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