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「いや、いいよ。今仕事忙しいし」
一瞬何て答えていいのか分からなくて、ゆつきは拒否しようとした。
『何言ってるのアナタは! お父さんが死んじゃうかもしれないっていうのに、仕事なんかどうでもいいでしょ』
母のヒステリックな声に、ついゆつきも冷静さを欠いてしまう。
「何言ってるのお母さん。いつだって仕事仕事で、家庭を顧みなかったのはお父さんでしょ。そのくせ家にいるときは、いつも怒ってばっかりで、何でそんな人の為にわざわざ帰らなきゃならないのよ。絶対に帰らないから!」
つい、思い切り怒鳴ってしまい。そのまま電話を切ってしまった。
「ゆつちゃん」
七美が心配そうに見つめている。
「七美」
「お父さんガンなの?」
「うん。今日倒れたみたい」
「そっか……帰らないの?」
「うん」
「何で? 帰ったほうが良いよ」
「帰るわけないでしょ。ワタシがあの人のことが大嫌いなこと、七美知ってるでしょ!」
つい大きな声を出してしまった。
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