第1章 『落とした本は拾うものじゃない』

2/6
前へ
/13ページ
次へ
大抵の学校にも、“どこぞのアイドルなんかよりも可愛くて綺麗で人気のある少女”というのは、一人か二人程度は、居ると思う。 その例に漏れず、俺の高校にも、“そんな少女”が居る。 『汐実 詩菜(しおみ しいな)』 幸運にもこの『御守 結斗(みかみ ゆうと)』と同じ2年C組にだ。 可愛いとも言えるし、綺麗とも言える。 長い艶のある黒髪に、白い肌。 切れ長の瞳と、そのグラビアモデル並みのスタイルが特徴的だ。 更に、声も良い――低過ぎずそれでいて高過ぎない。 アニメの声優とかしてます、とか言われたら録画予約必須だ。 オマケに勉強も出来て、スポーツ万能。 人付き合いが苦手らしく、あまり社交的では無いようだが、そもそも人を惹きつける魅力がある。 彼女が少し気分を変えて、「今日、皆でカラオケ行かない?」とか言ったら、クラス全員でカラオケボックスを貸切るだろう。 そんな彼女が、今現在、俺の直ぐ近くにいる。 まぁ、単純に定期的に行われる席替えをした結果、隣になっただけなのだが……。 正直、こんな美少女が隣なんて、今日を境に、俺の学園生活も輝けるモノに――!? なんて、淡い期待を抱いたものだが……。 ――なんだかんだと、つい先ほど、帰りのホームルームが終った所だ。 交わした言葉は「よ、よろしくね」「えぇ、よろしく」の僅か12文字。 「……――」 折角なのだから、少し位、喋っても良いと思うのだが、彼女居ない歴17年にして友達も少ない俺には、些かハードルが高かった。 次の席替えまで、こんな感じが続くのか……。 帰り支度をしながら、諦めが滲む情けない苦笑が、小さく漏れた。 ――と、
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加