第2話 はじまり

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響の家は公園から割と近くて、歩いて10分ほどで着いた。 三階建てアパートの一室。一階。 「さ、入れよ。きたねーとこだけど」 言って玄関の中へと消えていく響。 「んじゃ、お邪魔しまーすっと」 「誰もいねーからそんなんいらねーよ」 「一応礼儀でしょ」 当たり前の挨拶をしてから中へ入る。 決して広いとは言えない間取りだが…それよりなにより 「こりゃまた…すごい…」 「だぁー!!もう!そんな見んなよ!」 間取りの問題ではなく、つまりはさっき響が言った『きたねーとこ』ってのがそのまま、言葉の通りだったのだ。謙遜とかではなく。 散乱した衣服に、積み上げられた漫画やDVD。それにカップ麺のカラ容器…空き缶。 一通りの散乱物を見渡していると、さすがに恥ずかしくなったのか、乱暴に足でそれらを部屋の隅に追いやりはじめた響。 たしかに、男の部屋なんて。こんなもんなのかもしれない。 なんとか出来上がったスペースに促されるまま腰を下ろし改めて部屋を観察。 「ここには一人で住んでるの?」 確認もしないでついてきたが、考えてみれば両親と住んでいても、あるいは彼女と住んでいてもおかしくない。 部屋の広さ的に実家ってことはなさそうだけど、同居人がいるのであればその人の了解もとらなければ。 「うん。俺一人。家族いないから」 「そっか」 一人暮らしと言うことに安堵しつつ、家族がいないと言う表現が少し引っかかった。 が、特に尋ねることもなく尚も部屋を見渡していると、テレビ台の端っこに置いてある時計が目に入った。 現在の時刻…14時過ぎ。
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