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響の家は公園から割と近くて、歩いて10分ほどで着いた。
三階建てアパートの一室。一階。
「さ、入れよ。きたねーとこだけど」
言って玄関の中へと消えていく響。
「んじゃ、お邪魔しまーすっと」
「誰もいねーからそんなんいらねーよ」
「一応礼儀でしょ」
当たり前の挨拶をしてから中へ入る。
決して広いとは言えない間取りだが…それよりなにより
「こりゃまた…すごい…」
「だぁー!!もう!そんな見んなよ!」
間取りの問題ではなく、つまりはさっき響が言った『きたねーとこ』ってのがそのまま、言葉の通りだったのだ。謙遜とかではなく。
散乱した衣服に、積み上げられた漫画やDVD。それにカップ麺のカラ容器…空き缶。
一通りの散乱物を見渡していると、さすがに恥ずかしくなったのか、乱暴に足でそれらを部屋の隅に追いやりはじめた響。
たしかに、男の部屋なんて。こんなもんなのかもしれない。
なんとか出来上がったスペースに促されるまま腰を下ろし改めて部屋を観察。
「ここには一人で住んでるの?」
確認もしないでついてきたが、考えてみれば両親と住んでいても、あるいは彼女と住んでいてもおかしくない。
部屋の広さ的に実家ってことはなさそうだけど、同居人がいるのであればその人の了解もとらなければ。
「うん。俺一人。家族いないから」
「そっか」
一人暮らしと言うことに安堵しつつ、家族がいないと言う表現が少し引っかかった。
が、特に尋ねることもなく尚も部屋を見渡していると、テレビ台の端っこに置いてある時計が目に入った。
現在の時刻…14時過ぎ。
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