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どうやら、さっきの肉まん。朝ごはんのつもりだったのにお昼ご飯になってしまっていたようだ。
「なぁ…麻生…さん?」
お昼にしては少なかったよなぁなんてぼーっと考えていると、俺の目の前に寄せ集められた衣類の山に埋もれるように座った響が頬を書きながら照れくさそうに俺の名前を呼ぶ。
「…あー伸人でいいよ、俺も響って呼ばしてもらうから、いい?」
「あ!うん!オッケーオッケー!」
急に名前で呼ぶのは失礼だと思ったのか知らないが、こっちとしては苗字で呼ばれるほうがなんだかむずがゆいので名前でいいと言うと、途端、響の表情がパッと明るくなった。
「で、なんかようだった?」
「あ…あのーさ。泊まるのは全然いいんだけどさ、あのー…」
麻生さん?と疑問形で呼ばれたのでその先があると思って話を戻したんだけど…
なんだろ、なんかまたモジモジしてる。
「飯が…」
「ん?」
「その…俺、今ほんっと金なくて!」
耳を真っ赤にしてやっとのことで絞り出した言葉。
なるほど。
「それで、あの肉まんへの異様な執着ってわけね」
「そーだよ!だから食うもんねーの!ごめん!」
笑いながら返すと、なんか…怒りながら謝られた。
そのままうつむいて何故か前後にユラユラ揺れている響を横目に、自分の数少ない持ち物である財布を確認。
豪勢なディナーと洒落込まない限り、一週間ほど生活できそうな額は入っていた。
「じゃぁ、俺だすよ?泊めてもらうんだしそれくらい」
へらっと笑って提案すると
「まじ!!?奢ってくれんの!?」
ガバッと顔をあげた響が、押し倒されるんではなかろうかと思うほどの勢いで胸元に飛びかかってきた。
よっぽど飢えているのか、神でも現れたかのように目を輝かせている。
「あ!じゃぁ鍋しようぜ!」
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