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「鍋?外食のほうが楽なんじゃない?」
外へ食べに行くものだとばっかり思っていた俺に思いがけない提案が飛んできて、思わず台所のほうへ視線を持っていきつつ外食へ促す。
部屋がこの有様なのだから、当然視線の先はとても料理ができる空間ではないと思っていたのだが…
「あれ?台所はきれいだね」
予想外の片付きっぷり。
「だ、台所くらいは…そりゃぁ、な!」
「…料理、しないんだね」
「っ…しねーだろ!一人なんだし」
一人暮らしみたいだし、カップ麺やコンビニ弁当が主な食糧なのだろう。
すんなり図星をついてしまったらしく、開き直った響は俺から離れ立ち上がり腰に手を当て胸を張った。
「胸張るとこじゃないと思うけど。ま、台所は使えそうだから鍋、しますか」
そう言って俺も立ち上がる。
「おっしゃ!」
嬉しそうに笑う響が玄関へ向かう。
「じゃぁ、買い物行こうぜ!」
こっちを振り返り満面の笑みで手を伸ばす。
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響の家から歩いて20分ほど、地味に遠いスーパーに到着。
やっぱコンビニ弁当でよかったんじゃないか…と言う思いは、かごをもって軽やかに店内へ入っていく響の後姿を見て消えた。
「なんか楽しそうだし、いっか」
一人呟いて後を追って店内へ入っていく。
「まず、どんな味の鍋にするか決めないとね」
響に追いつき、ひょいっとかごを取り上げ隣に並ぶ。
たぶん、調味料もろくに揃っていないだろうから、鍋の素…みたいなのを買ったほうが確実かと思い鍋の素がいっぱい置いてあるコーナーへと足を向ける。
「んーと、醤油、塩、味噌、チゲ、トマト…カレー……コンポタ…」
「その後半のはやめようよ、普通がいい」
「そう?じゃぁ…あ!この醤油とんこつってやつは?」
「いいね。シメはラーメンで決まりだね」
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