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「さて、殺気ってのはもう少し上手く隠すべきだと思いますよー」
どこへ向けるでもなく声をかける。
すると、端の木陰から白いスーツ姿の男が一人、ナイフ片手に姿を現した。
「…おまえを、処分しにきた」
挨拶もなく第一声が死刑宣とか、なんなのまったく。
「俺、別に脱走したわけじゃないと思うんですけどね」
目の前にいる戦闘態勢の男が着ている白いスーツには見覚えがある。
昨日まで世話になっていた研究所で働いているやつが揃って着ていたスーツ。
胸元の赤いネクタイはそれなりに上の方の役職の証…だった気がする。
「…すまない…俺にもどうしたらいいかわからなくて」
そう言ってナイフを下ろした男は、戦闘態勢から一転して泣きそうな顔をしてすがる様な目を俺に向けてきた。
「佐久間様を…助けてくれないか…」
「んーと?とりあえず場所変えません?近くに公園あったんで」
なんだか面倒なことになりそうだなと思いながらも、ともかくこの場所から離れることを優先したかった。
実を言うと、まだ響の家の目の前にいるわけで…もし気づいて起きて来たらと思うと気が気じゃない。
絶対に…巻き込むわけにはいかない。
仮に、響が俺がいたところと同じ研究所にいたのならもうこいつの格好なんて見たくないだろうし。
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