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「俺にはあんたらを助けてやる理由、ないよね?」
「そんな…」
「助けてやろうぜ」
「え?」
今にも涙を流しそうな顔をしていた男の顔に驚きと期待の色が広がっていく。
その視線は俺を通り越した後方に向けられていた。
「あら。見つかっちゃった?」
声の主。
走ってきたらしくだいぶ息の上がっているそいつ。
たった一日一緒にいただけなのに覚えてしまった声。
「見つかっちゃった?…じゃねーよ!探したじゃんか!」
「うん。ごめん」
探さなくてよかったのにって思いながらも、来てくれて、怒りながらポコポコ叩いてきて…それが…嬉しかった。
必要とされているようで。
「おまえは…伸人は俺の友達なんだよ!だからなんも言わずに消えんなよ!」
「うん。ほんとごめん」
なおも胸に力のない拳を叩きつけながら深紅の瞳を俺に向けて言葉を紡ぐ。
「なっ!ちょっなにすんだよ!」
「痛いじゃんか、そんなに叩いたら…ね?」
「ぅうーーー」
痛いなんて嘘。
ただなんとなく、愛しく感じてしまったから。
俺は響を抱きしめていた。
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