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「あーっと。そのー取り込み中な感じのところ悪いんだが…」
「ん?あぁ。そうだったねぇ」
場の雰囲気に困惑しながら、やっとみつけた隙間を狙ってスーツの男が軌道修正を試みる。
「助けに行くよな!」
「んーそうねぇ」
暴れるでもなく、俺の腕の中でまっすぐに放たれた言葉は、決して揺らぎそうにない半ば決定事項。
「来て…くれるのか?」
「もち!」
「…みたいよ?」
響が行くと言うのなら…なんて。
遠足じゃないんだけどなぁ。
俺の腕から飛び出した響の瞳に宿っていたのは、揺るぎない自信。
「ありがとう!!場所はわかるよな?」
「昨日までいたし?」
「なら、明日にでも来てくれ!」
一度は諦めかけていた話がうまくいき、少し弾んだ感じで去っていく後姿。
「りょうかい」
背中に向かって声をかけると
「木津涼也…俺の名だ!一応覚えといてくれ」
走りながら。
こっちを振り向き手を振りながら。
なんだかカッコよく自己紹介をして去っていくちょっと痛い奴。
「走りながらとか、映画やドラマじゃあるまいし、聞き取りにくいよねー」
「だな。だっせーよ」
木津さんが去っていった方を見ながら二人して笑いあう。
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