第2話 はじまり

15/17
前へ
/25ページ
次へ
「あーっと。そのー取り込み中な感じのところ悪いんだが…」 「ん?あぁ。そうだったねぇ」 場の雰囲気に困惑しながら、やっとみつけた隙間を狙ってスーツの男が軌道修正を試みる。 「助けに行くよな!」 「んーそうねぇ」 暴れるでもなく、俺の腕の中でまっすぐに放たれた言葉は、決して揺らぎそうにない半ば決定事項。 「来て…くれるのか?」 「もち!」 「…みたいよ?」 響が行くと言うのなら…なんて。 遠足じゃないんだけどなぁ。 俺の腕から飛び出した響の瞳に宿っていたのは、揺るぎない自信。 「ありがとう!!場所はわかるよな?」 「昨日までいたし?」 「なら、明日にでも来てくれ!」 一度は諦めかけていた話がうまくいき、少し弾んだ感じで去っていく後姿。 「りょうかい」 背中に向かって声をかけると 「木津涼也…俺の名だ!一応覚えといてくれ」 走りながら。 こっちを振り向き手を振りながら。 なんだかカッコよく自己紹介をして去っていくちょっと痛い奴。 「走りながらとか、映画やドラマじゃあるまいし、聞き取りにくいよねー」 「だな。だっせーよ」 木津さんが去っていった方を見ながら二人して笑いあう。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加