第1話 出会い

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「あとのもの、適当に処分しといてもらえます?」 「わかった。あ…あのさ、一つだけ条件があるんだけど…」 さっさと身支度を終え、さてさようならって時に、慌てて男が扉と俺との間に割ってはいってきた。 そうだよね、やっぱタダってわけないよね。 「んーどんな条件?」 あえて俺を外に出す理由。興味はあるけど、面倒なことはゴメンだな… 「簡単だよ。自由に生きて欲しいんだ。偽りじゃない生き方を」 「……?」 面倒ではないけれど。よくわからない条件を突きつけられて、一瞬迷ったけど。 「…いつもどーりっしょ。要するに」 自由。 それが、俺にとってなんなのか。 たぶん、今のこの生き方は違うんだろう。 でも、この生活を俺は苦しいとは思っていない。なら、自分なりに楽な生き方、自由なんだと… 「違うって事、ホントは分かっているんでしょ?」 「さぁ?」 男に向かってこれでもかってぐらいニッコリと笑ってみせる。 違うも何も、自由ってのが俺にはわからないんだよね 「ポーカーフェイス…」 「どうとでも」 人に素を曝け出すことほど危険なことは無い 「で?結局俺はココを出てっていいのかな?」 「…いいよ」 言って扉の前からすっと身体をずらす男。 通っていいよってことらしい。 「約束は守らないかもよ?」 「わかってる。でも君は、止めたら止めたで「わかった」ってココにのこるんでしょう?」 「だろうねぇ」 帰るべき場所もない俺にとって、案外とここはいい場所だったのかもしれない。 でも、必要ないって言うならいても迷惑だろうし?
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