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自分の生き様を嘆く気も誇る気も無いけれど、示される道が見えないこの状況では、とりあえずは自分の行動を自分で探してみるほかなかった。
「ねぇ。唐突だけど…今日泊めてくれない?」
「なにそのテレビの企画みたいなの」
簡単な結論。家がない。知り合いもいない。だから、目の前の名前も知らない男にすがる。
我ながらダサすぎる。
けれどその言葉はやはり唐突すぎたのか、冗談だと思われて笑い飛ばされてしまった。
「いや、冗談抜きで、さっき家追い出されちゃってさ、ちょっとこの寒さの中野宿はー…」
「いいぜ!こいよ!」
本気だと訂正しようとする言葉を遮っての笑顔での承諾。
冗談だと思っていたわけではなく。ただ企画のようだと思い。その上でなんも躊躇いもなく彼は承諾するのか。
「あんたも十分へんなやつ」
「はぁ?なんで俺が!」
なんで追い出された?金は?家族は?
そんな問いをすっ飛ばしてこんな不審な男を信用する。
よっぽど変な奴か。お人好しすぎるか…だな。
「そうだ!俺、烏丸響(からすまひびき)よろしくな!」
立ち上がり手を差し出しながら笑顔でかなり遅めの自己紹介をしてくれた彼、響。
その瞳は、今の世には珍しい紅い色をしている。
「麻生伸人…よろしく」
同じく立ち上がり軽く握手をかわす。
これから巻き込まれる未来
それは、深紅の瞳に吸い込まれるように…
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