777人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
歯がゆい気持ちを押し隠し、不安顔のアンに微笑んでみせてから、私は氷室 菜摘の乗るハイヤーの後ろにつけられたタクシーに乗り込んだ。
そして半身を引き裂かれるかのような痛みを抱えながら、愛しい人の姿が見えなくなるまで、サイドミラーを見つめ続けた。
研究所から空港までは、一時間足らず。
夕方前には、懐かしくも忌まわしい氷室家の屋敷に到着しているだろう。
いくら名残惜しくとも、沈んでばかりいられない。
復讐を果たすため、私は無理矢理に気持ちを切り替えた。
最初のコメントを投稿しよう！