罪の起源 第8話

早足で自室に向かいながら、愛する二人の名を心の中で呼ぶ。アン、シオン、アン、シオン。呪文のように唱えるごとに、動揺や迷いが薄らいでいく。自室に戻った私は、チェストの上に置いておいた木箱を抱え、すぐに踵を返した。向かう先は、使用人宿舎のすぐそばにある温室。氷室家の敷地の中でこの場所こそが、暖かな国で生まれ育ったシオンが眠るにふさわしい。

/40ページ

最初のコメントを投稿しよう！

776人が本棚に入れています

本棚に追加

広告非表示！エブリスタEXはこちら>>