猫の獲物

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猫の獲物

 昔、飼っていた猫が、やたらと色んな獲物を捕ってくる奴だった。  鼠に雀に鳩、金魚や小型の亀、たまに、烏や蛇まで捕ってくるから驚きだ。  猫に通じる訳じゃないけど、衛生上とか殺生の観念とか色々あって、持ってくるたび叱った。でも、相手にはまるで通じない。  まるで、お前は狩りができないから、代わりに俺が捕って来てやってるんだ、くらいの態度で獲物を運んでくる。  見た目も態度も可愛かっただけに、それだけが玉に瑕だった愛猫。  いつが死んで早十年。掃除をしていたら、当時あいつがつけていた首輪が出てきた。  家族でひとしきり懐かしんだ後、何の気なしに仏壇に首を置いた。そうしたら、いつの間にか首輪がなくなった。  誰が片づけたのだろう。気になって尋ねたが、家族のに聞いても知らないという。  万が一空き巣が入り込んだとしても、あんな物だけを持って行く理由はないし…。  悩んでいたら、その翌日から、玄関先に動物の紫外が置かれるようになった。  鼠に雀に鳩、金魚や小型の亀、烏、蛇…。  どう考えても、こんなことをする奴は一人…一匹しかいない。  でもどうして今頃あいつが?  たまたま首輪を見つけたから、それを媒介に化けて出てきてるのか?  もう十年も経ってるんだから、清々しく成仏しててくれよ。いや、化けて出たいならそれでも構わないから、狩りの獲物を持ち込むのはやめてくれ。  その意思は通じないらしく、日参ではないものの、玄関には獲物という名の動物の死骸がたびたび置かれる。  鼠に雀に鳩、金魚や小型の亀、烏、蛇…ついに小型犬まで置かれるようになった。  …猫よ。お前の狩りの腕前は判った。だからもうこれ以上は、獲物を捕るのをやめてくれ。  そう叱るために夜中を待つ。  そして深夜。
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