第1章

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 試験の直前でもない限り図書室は静かだ。  先週で試験も答案の返却も終了したため、いまは一番静かなとき。  わたしが一番落ち着いて読書ができるとき。 「返却と貸し出しいいですか」  カウンターで待機しながら下を向いて読書にいそしんでいたわたしの頭上から聞こえる低くて耳障りのいい声。  毎日、いや正しくはわたしが係りの時はいつも利用しに来る学生が、今日もまた訪れた。  いつも顔を合わせているせいか近しい友人のような錯覚を覚えるが、彼のことは顔と名前とクラスしか、要するに貸し出しの際に必要な情報しか知らない。  きっといつもいるから部活には入っていないはず。  図書委員のように定期的に仕事のある委員会でもないはず。  ほかは、知らない。
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