第1章

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 ドキドキしながら、そしてこのドキドキがばれてないかと、冷や冷やしながらキンモクセイを眺めた。  ふと、彼が腰をかがめ、わたしの耳元で囁いた。 「初恋とか、真実の愛って意味もあるんだよ。」  わたしは驚いて、「ひゃっ」と小さく嬌声をあげながら後ずさる。  「ははっ」といたずらっ子のような笑顔を向ける彼。  どちらかというと大人びた顔立ちで、いつも図書室の隅で本を読んでいた大人しいイメージとは違う。  年相応、というよりはもっと子供っぽく見える笑顔。  しばらくキンモクセイを眺め、匂いを堪能した。  彼がわたしに向き直り、わたしの頭にポンと手をのせながら微笑む。 「また、君の当番の日に返しに来るね。」
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