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「ほんといいネタ運んで来るよね…陽鞠といたら楽しいわ」
香織が帰り支度をしながら、ニヤニヤと笑っている。正門付近に他校の女子がいると、既に情報を持っているようだ。見られる事にも慣れてないし、クタクタの私は、ラベンダー風呂に潜水したい気持ちで教室を出た。
「よし、帰るか!」
いつもなら何処かの部にヘルプに入る筈なのに、王子も教室の外で待っている。護衛2名…で足りるんだろうか。私とは違って、楽しそうな2人が羨ましい。正門に近づくと数名の女子が私達に向かって歩いてくる。『キタ!!』と思わず目を閉じると、女子が囲んでいるのは香織だった。
「ウケるぅ…」
いつものオバサン発音で、腹を抱えている香織。王子までつられて笑っていた。集団の中で一番可愛い子が
「私もホクロあるんです!」
大きい瞳で王子に訴えてきた。チェックのミニスカートで髪もフンワリしたロング。お人形さんみたいだ。『もう、その人でいいじゃん!』その子なら王子ともつり合うし美男美女でハッピーエンド。誰も文句は言わない。
「だから何?問題はホクロだけじゃないし。今の俺見て告白されても、嬉しくも何ともないから帰ってくれる?」
私は腕を引っ張られ、隣に並ぶと女子達はキョトンとしていた。無理もない。香織なら分かるけど、見栄え的に『はぁ?』ってなるし。
「目をつけるの遅いんだよね。俺は5歳の時に、天使にアップルミントの飴で手なずけられてるから。見た目よりハートだから!」
『おいっ!』
さりげなく貶されたよね、今!私がチラリと睨みを利かせてる横で、香織は更に大爆笑していた。口角を少し上げ、私の肩に回した手に少し力が入りドキッとする。性格は超悪いけど…アップルミントで、直せたらな…と心の中で密かに思った。
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